2021年12月10日の本会議では、梶議員(動議提案者の一人、市民クラブ)は、動議提案理由の一つとして「正当な答弁を行った当局の信用を大きく失墜させる無礼な言葉を用い」[1]と述べています。
引用 [1]
○23番議員(梶 泰久)
[中略]
本件は、本市重要課題である市内公立学校の学校規模・学校配置の適正化について、正当な答弁を行った当局の信用を大きく失墜させる無礼な言葉を用い、かつ、自身の法の解釈で断定的な発言をしたことなどは、本議会の権威と品位を著しく汚すものであります。[1]
以上の経緯及び理由から、18番 山下富美子議員に対する懲罰を求める動議を提案いたします。
(令和3年12月10日第11回定例会会議録)
また12月13日の懲罰特別委員会においては、複数の議員が懲罰賛成の意見の中で、「教育長が正しい答弁をしているにもかかわらず」(久保田議員: 自民沼津)や「正当な答弁を行った教育長に対し」(長田議員: 副議長、公明党)、「教育長の答弁は正しいものであります」(川口議員: 日本共産党沼津市議団)、「教育長や市長が誤りのない答弁をしているにもかかわらず」(霞議員: 市民クラブ)などと、いずれも教育長や市長の答弁が正当なものであると述べています。 ここでは、教育長や市長の答弁が正当なあるいは正しい答弁であったかどうかを検証します。
まず、12月7日の本会議での、山下議員と奥村教育長および頼重市長との間での質疑答弁を見てみます。
教育長に対する山下議員のここでの質問は、「地方公共団体を代表するのは市長なのか、それとも教育委員会なのか」[2]ということです。これに対して、教育長の答弁は「執行機関は教育委員会であると考えている」[3]となっています。教育長の答弁だけを取り出してみれば内容的には正しいものですが、山下議員の質問には正面からは答えていないはぐらかした答弁であり、正しい答弁であるとは言えません。
また、市長に対する質問は「学校の統合廃止についての最終的な責任・権限は市長にあるのではないか。またその認識があるかどうか」[5]ということですが、市長の答弁は「教育委員会の所管事項であり、教育委員会が責任を持って進めるべきものであると考えている」[6]となっています。この市長の答弁も質問に対する正面からの答弁ではなく、自身には責任がないという意味に捉えられるものになっています。 「検証2 関連法令の解釈の問題」のところで検証しているように、学校の統廃合に関しては市長にも大きな役割と責任があり、また地方公共団体を代表する長としての責任もあります。それにも拘らず、教育委員会だけが責任があるかのような発言は誤りのない発言とは到底言えず、批判されて当然のものだと考えられます。
引用 [2] ~ [7]
○18番議員(山下富美子)
私がただしている責任という問題は、権限を伴っているので、この統廃合の問題についての責任、統合についての事務を処理する権限は教育委員会ですよ。だけれども、この統合する権限については、市長なんですよ。もとより、じゃあ学校の設置者は誰ですか。それは地方公共団体であって、[教育委員会ではありません。]学校教育法第2条、学校は地方公共団体が設置、この場合、地方公共団体を代表するのは誰ですか。市長ですか、それとも教育委員会ですか、伺います。[2]
○教育長(奥村 篤)
執行機関は教育委員会である。そういうふうに考えております。[3]
○18番議員(山下富美子)
[教育長、それは大きな間違いですよ。] [4] これ、執行機関、学校教育法第2条、学校設置、学校は地方公共団体設置なんですね。[それでこれ文科省に確認したんですよ。] 統合するか小規模校にするかは、最終的には学校教育法第2条に示すとおり、学校の設置者である地方公共団体であると。[つまり市長なわけですよ。] さらに文科省の手引で、各設置者において、それぞれの地域の実情に応じた最適な学校教育の在り方や学校規模を主体的に検討することが求められていると示されていますが、この各設置者とは地方公共団体であり、[つまり市長のことです。市長は、]それぞれの地域の実情に応じた学校教育や規模を主体的に検討することが、この手引の中でも求められているんですよ。言うまでもないことですが、廃止する権限は、市長が議会の議決によって行使できます。それは市長です。加えて、学校だけではなく、広く地域のありよう、コミュニティなどを考える際に、それはまさに市長の権限に入る課題であり、その意味で、この統合・廃止についての最終的な責任、この権限は市長にあると考えますが、市長にはその認識がないのでしょうか、伺います。[5]
○市長(賴重秀一)
お答えいたします。
先ほどから、教育長のほうからお答えされているところでございますが、私は、市長という立場・権限、その範囲内で最大限責任を持って、沼津市の教育の振興のために努めてまいったと考えているところでございます。学校統合に関するこの事項に関しましては、先ほど来からお話をさせていただいておりますように、本来、教育委員会の所管事項であり、教育委員会が責任を持って進めるべきものであると考えているところでございます。[6] 以上です。
○18番議員(山下富美子)
[大変残念な答弁ですけど、これ、文科省にも確認したんですね。残念です。] [7]
[後略](オレンジ色のマーカー部は議事録から削除された箇所で、議会の音声記録から文字起こしされ、Let’s 傍聴NumazuのFacebookのページに記載されたものです)
(令和3年12月7日第11回定例会会議録)
教育長の答弁[3]に対する山下議員の「教育長、それは大きな間違いですよ」[4]という発言は、山下議員の質問を考慮せずに教育長の答弁だけを見ると、山下議員が「執行機関は教育委員会である」ということを否定した発言のように捉えられます。懲罰特別委員会において懲罰賛成派の議員は、このように教育長と山下議員のやり取りの一部分だけを取り上げて、教育長の答弁[3]とそれに対する山下議員の発言[4]が教育長の答弁内容を否定するものだと解釈して以下[8、9、10]のように問題にしています。
引用 [8] ~ [10}
○平野委員
[中略]
先ほど、問題になっている、教育長それは間違いですよと言った部分が、教育長が答えたのは、執行権限は教育委員会であると答えているんですね。設置者は教育委員会であると答えているわけではないんです。設置者は教育委員会であると答えていたとすれば、それは間違いですよと指摘をするべきだと思います。[8] 執行権限が教育委員会であるということは明確な間違いではない。だとすると、それを間違いですよと指摘したことに対して教育長はそれに反論することができないんです。
[後略]
○長田委員
[中略]
その質問で、正当な答弁を行った教育長に対し、「教育長、それは大きな間違いですよ」と否定され、本市の教育長の発言が間違いであると断定しております。[9] しかし、学校の設置・廃止に関する関連条文からしても間違いではないと考えております。
[後略]
○川口委員
[中略]
山下議員のこの執行権利に係る質問において、教育長の答弁は正しいものであります。この答弁に対し、山下議員の「教育長、それは大きな間違いですよ」との反論は的外れであり、山下議員の思い込みの表れです。[10] 教育長を侮辱することにもつながります。
[後略]
(令和3年12月13日懲罰特別委員会会議録)
しかし、その前からの教育長とのやり取りを見ると、「検証2 関連法令の解釈の問題」で検証しているように、山下議員は執行機関としての教育委員会の役割を理解しており、間違いですよという山下議員の発言が教育委員会が執行機関であることを否定したものであるとは考えられません。そうではなく、山下議員が懲罰特別委員会や12月17日の本会議での弁明で述べているように、「教育長、それは大きな間違いですよ」という発言は教育長の答弁内容に対するものではなく、教育長が質問に対して正面から答弁していないことに対するものであると解釈するのが妥当です。
懲罰賛成派の議員の解釈が意図的なものなのか、単に山下議員の発言を正確には理解していなかったためなのかは分かりませんが、山下議員の発言の意味を正しく解釈していないことには違いありません。 従って、教育長と市長の答弁は、山下議員の質問に対しての正当なあるいは正しい答弁と言えるものではなく、はぐらかした答弁であることは確かであり、山下議員の「大きな間違いですよ」という発言も、教育長の答弁内容を否定するような誤った解釈であるとは言えないと考えられます。