検証2-2bで確認しているように、学校の設置や廃止には総合教育会議での市長と教育委員会の間での協議・調整が求められており、市長にはそこで地域住民の意向を反映させる役割と責任があります。 さらに、地教行法の第一条の三では地方教育行政の大綱の策定について規定されていますが、これは、地域の実情に応じて、その地方公共団体の教育、学術等の振興に関する総合的施策を定めるものです。大綱の策定には総合教育会議での教育委員会との協議が求められており、その執行は長と教育委員会がそれぞれの執行権限に応じてあたることになりますが、大綱に地域住民の意向を反映させる役割と責任は長にあります。また、大綱の策定自体は長に義務として求められていますから、当然長がその責任を負うことになります。

地方教育行政の組織及び運営に関する法律 (大綱の策定等)

(大綱の策定等)
第一条の三 地方公共団体の長は、教育基本法第十七条第一項に規定する基本的な方針を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体の教育、学術及び文化の振興に関する総合的な施策の大綱(以下単に「大綱」という。)を定めるものとする。
 地方公共団体の長は、大綱を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、次条第一項の総合教育会議において協議するものとする。
 地方公共団体の長は、大綱を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
 第一項の規定は、地方公共団体の長に対し、第二十一条に規定する事務を管理し、又は執行する権限を与えるものと解釈してはならない。

平成26年の地教行法の改正について、平成26年7月17日付で文部科学省初等中等教育局長名で、各都道府県の知事および教育委員会および指定都市の市長および教育委員会宛に、新しい地教行法についての説明や留意事項を記載した通知が出されています。当然、都道府県内の各市町村には同じ内容が周知されているはずです。

この中の「大綱の策定について」の「大綱の記載事項」には、大綱の主たる記載事項として考えられるものとして「学校の統廃合」が挙げられています。このことは、学校の統廃合の方針は、教育委員会との協議を経ながらも長の責任で策定されるものだと想定されていることになります。この点からも、学校の統廃合は教育委員会だけの権限と責任で行われるものではなく、その最終責任は市長あと考えられます。

12月7日の本会議において、山下議員の「この統合・廃止についての最終的な責任、この権限は市長にあると考えますが、市長にはその認識がないのでしょうか」[2]という質問に対しての、市長の「学校の統廃合は教育委員会が責任をもって進めるべきものと考えている」[3]という答弁は、学校の統廃合における自身の役割と責任を果たそうとはせずに、その責任を一方的に教育委員会に押し付けており、地教行法の趣旨にも反するものです。 大綱は、教育行政と長の権限である福祉や一般行政とを密接に連携させる必要があるために、地域住民の意向を反映して長が策定することが義務付けられている基本方針です。従って、山下議員の「地域のありようを考える際の市長の権限に入る課題」[1]というコメントは地教行法の趣旨に沿ったものであり、市長の答弁が「残念な答弁です」[4]と山下議員に言われるのも当然だと思われます。

引用 [1] ~ [4}

○18番議員(山下富美子)

[中略]
さらに文科省の手引で、各設置者において、それぞれの地域の実情に応じた最適な学校教育の在り方や学校規模を主体的に検討することが求められていると示されていますが、この各設置者とは地方公共団体であり、[つまり市長のことです。市長は、]それぞれの地域の実情に応じた学校教育や規模を主体的に検討することが、この手引の中でも求められているんですよ。言うまでもないことですが、廃止する権限は、市長が議会の議決によって行使できます。それは市長です。加えて、学校だけではなく、広く地域のありよう、コミュニティなどを考える際に、それはまさに市長の権限に入る課題であり[1]、その意味で、この統合・廃止についての最終的な責任、この権限は市長にあると考えますが、市長にはその認識がないのでしょうか、伺います。[2]

○市長(賴重秀一)

 お答えいたします。
 先ほどから、教育長のほうからお答えされているところでございますが、私は、市長という立場・権限、その範囲内で最大限責任を持って、沼津市の教育の振興のために努めてまいったと考えているところでございます。学校統合に関するこの事項に関しましては、先ほど来からお話をさせていただいておりますように、本来、教育委員会の所管事項であり、教育委員会が責任を持って進めるべきものであると考えているところでございます。[3] 以上です。

○18番議員(山下富美子)

 [大変残念な答弁ですけど、これ、文科省にも確認したんですね。残念です。][4]
[後略]

(オレンジ色のマーカー部は議事録から削除された箇所で、Let’s 傍聴NumazuのFacebookのページで議会の音声記録から文字起こしされたものです)

(令和3年12月7日第11回定例会会議録)