ここでは、本会議での山下議員の発言の問題とされている部分を詳しく見て、その意味するところを整理してみます。

山下議員の質問は、第一・第二中学校の統合方針が4ヶ月で廃止されたことについて奥村教育長に質問しているもので、統合の根拠や進め方についての疑問、廃止決定における疑問点、住民の間に生じた混乱・不信などについての責任などを追及しています。[1]

いろいろな点について質疑がされていますが、統合方針が廃止された責任については教育長は明確には答えておらず、質疑の最後の方で、この問題の最終責任が誰にあるのかということに関して「教育委員会の議決をもって学校を廃止できるかどうか」と山下議員が質問しています。[2] これに対して、奥村教育長は、一度「公の施設の中の学校をはじめとした教育機関の設置・管理・廃止は、地方公共団体の執行機関である教育委員会が行うものであります」[3]と答えていますが、山下議員に「この場合の職務権限とは、統合についての事務を処理する権限であり、統合する権限ではない。いかがですか」[4]と指摘され、「今、議員御指摘のとおりですね、教育委員会の所管に属する教育委員会の設置主体は都道府県の市町村、申し訳ございません。教育委員会の権限でありますが、地方公共団体の自治事務であるということですよね」[5]と前の答弁を訂正しています。しかし、山下議員の最初の質問[3]に対しては答えておらず、はぐらかした答えになっています 。

つまり、ここでの山下議員と奥村教育長は、「地方公共団体における学校を始めとした教育機関の設置者(設置主体)は地方公共団体であり、教育委員会は設置者ではなく、設置(統合)についての事務を行うための機関である」という解釈で一致しています。 山下議員はさらに、「地方自治法244条の2 公の施設の設置、管理及び廃止」を根拠にして、「廃止する権限は市長が議会の議決によって行使できるのであるから、権限は市長に属している」[6]と述べ、「統廃合の責任は市長にあるのではないか」[7]と質問しています。奥村教育長がこれに対しては正面から答えていないため、[8] 山下議員が再度「統合についての事務を処理する権限は教育委員会だけれども、統合する権限は市長にある」[9]として、「学校教育法第2条に学校の設置者として定められている地方公共団体の代表者は誰なのか。市長なのか、教育委員会なのか」[10]と尋ねていますが、奥村教育長はこの質問には正面からは答えていません[11]。もし学校を設置する場合の地方公共団体の代表者が教育委員会であるならば、教育長はそうであると答えていたはずです。しかしそうは答えなかったのは、市長だと答えると市長に責任があることになり、その場合は市長の立場が悪くなるのではないかと考えたのかもしれません。いれにせよ、質問に対する正当な答えにはなっていません。

引用 [1] ~ [11]

○18番議員(山下富美子)

 第一・第二中学校区の統合方針の一連の動きと取組について伺います。
 まず、統合方針廃止の要因と責任の所在です。
 この要因について、どのように考え、大きな混乱と行政への不信についてどのように受け止めているのでしょうか。また、僅か4か月で方針の廃止、それに伴う混乱・不信について、これらの責任の所在について伺います。[1]

[中略]

○18番議員(山下富美子)

[中略]
 次に、市長に存する責任性の認識について伺います。
 さて、今回の問題についてのもう一つの疑問、つまり責任の所在の問題、あえて最終責任と言うべきと思いますが、答弁では、学校統合に関する事項は、教育委員会の所管事項とのことでした。
 ここで伺いますが、その教育委員会の議決をもって学校を廃止できるんでしょうか。いかがでしょうか。[2]

○教育長(奥村 篤)

 お答えします。
 地方自治法において、地方公共団体は、公の施設を設けるものとされております。学校教育法第2条においては、学校は、国・地方公共団体・学校法人のみがこれを設置できると規定されております。地方教育行政の組織及び運営に関する法律第21条の規定により、公の施設の中の学校をはじめとした教育機関の設置・管理・廃止は、地方公共団体の執行機関である教育委員会が行うものであります。[3] 以上です。

○18番議員(山下富美子)

 いいですか、ここで私はあえて、地教行法第21条、教育委員会の所管に属する第30条に規定する学校その他の教育機関の設置・管理及び廃止に関することは教育委員会の職務権限とされていますが、この条文への解釈について再度伺いますね。この場合の職務権限とは、統合についての事務を処理する権限であり、統合する権限ではない。いかがですか。[4]

○教育長(奥村 篤)

 今、議員御指摘のとおりですね、教育委員会の所管に属する教育委員会の設置主体は都道府県の市町村、申し訳ございません。教育委員会の権限でありますが、地方公共団体の自治事務であるということですよね。[5] ですから、学校統合に関する事項というのは、関連する業務はありますので、市長部局と連携を図りながら、教育委員会において責任を持って進めてまいりたいというふうに考えております。以上です。

○18番議員(山下富美子)

 教育委員会の職務権限というのは、統合についての事務を処理する権限であり、統合する権限ではないんですね。この学校イコール公の施設、地方自治法244条の2、公の施設の設置・管理及び廃止[、廃止する権限]は市長が議会の議決によって行使できる。[つまり権限は市長に属しています。] [6] 私のただしている責任という問題は、おのずからこの権限に伴っているので、統廃合の問題についての責任は、ほかでもない市長にあると考えますが、違いますか。[7]

○教育長(奥村 篤)

 先ほどもお答えしましたが、学校統合に関する事項は、教育委員会の所管事項であり、教育委員会が責任を持って進めるものだと思います。[8] 以上です。

○18番議員(山下富美子)

 私がただしている責任という問題は、権限を伴っているので、この統廃合の問題についての責任、統合についての事務を処理する権限は教育委員会ですよ。だけれども、この統合する権限については、市長なんですよ。[9] もとより、じゃあ学校の設置者は誰ですか。それは地方公共団体であって、[教育委員会ではありません。]学校教育法第2条、学校は地方公共団体が設置、この場合、地方公共団体を代表するのは誰ですか。市長ですか、それとも教育委員会ですか、伺います。[10]

○教育長(奥村 篤)

 執行機関は教育委員会である。そういうふうに考えております。[11]

(オレンジ色のマーカー部は議事録から削除された箇所で、議会の音声記録から文字起こしされ、Let’s 傍聴NumazuのFacebookのページに記載されたものです)

(令和3年12月7日第11回定例会会議録)

山下議員の関連法令の解釈、つまり学校の設置、管理および廃止に関する市長と教育委員会の役割と権限をどう解釈しているかをまとめると以下のようになると解釈できます。

  1. 地方教育行政の組織及び運営に関する法律第21条に規定する教育委員会の権限とは、学校その他の教育機関の設置、管理及び廃止に関する事務を処理する権限であり、設置、管理及び廃止する権限ではない。
  2. 地方自治法第244条の2で公の施設の設置、管理及び廃止する権限を定められた地方公共団体、また学校教育法第2条で学校の設置者として定められた地方公共団体の代表者は市長であるから、学校の統合方針廃止の最終責任者は教育委員会ではなく市長である。

1に関しては、奥村教育長も同じ解釈であると考えられます。また、2に関しての質問には奥村教育長は(さらに市長も)正面からは答えていません。